◎「胃を含む消化管粘膜下腫瘍」が疑われた場合

検診その他で「胃を含む消化管粘膜下腫瘍」が疑われた場合、経過観察となる場合と、外科治療が考慮される場合とがあります。

手術適応の判断として、以下2点いずれかがあげられます。

1. 消化管出血、消化管閉塞などの症状があるかないか

2. 内視鏡生検(病理組織検査)でGISTが診断された

 

いずれも該当しない、つまり無症状かつ内視鏡生検で診断がつかなかった場合には腫瘍の大きさで治療方針が定められます。GIST診療ガイドライン(2022年4月改定第4版)では、

1. 2㎝未満

2. 2から5㎝未満

3. 5㎝以上

で分類されています。施設によっては、超音波内視鏡下穿刺吸引法 (EUS-FNA)が行われる場合があります。

 

手術を行わない場合には、定期内視鏡検査を含む通院がすすめられます。

手術が望ましい・考慮される場合は、外科外来を受診いただくこととなります。

手術を行う場合に消化器外科医は、以下の方針を目指した術式を提案します。

1. 肉眼的断端陰性の完全切除

2. 系統的リンパ節郭清は推奨されない

3. 臓器機能の温存を目指した切除

 

近年、国内の多くの施設でロボット支援手術、胸腔鏡・腹腔鏡手術などの低侵襲手術が導入されています。GISTを含む消化管粘膜下腫瘍においてもその大きさ・性状によりますが、低侵襲手術が広く行われているのが現状です。具体的な術式として臓器機能の温存を目指した、腹腔鏡下局所切除や、胃の粘膜下腫瘍においては腹腔鏡内視鏡合同手術(LECS)が多いようです。

 

LECSは保険診療が承認された2014年以降増加している術式です。

全身麻酔がかかった後に、腹腔鏡手術を進めつつ、口から胃の中に内視鏡(いわゆる胃カメラ)を挿入します。そうすると、腹腔内から胃の外側(漿膜面)の様子、内視鏡からは胃の中の様子(粘膜面)が同時に観察できるようになります。胃の外からと中からと、腫瘍の範囲を正確に見極めつつ、最小限の切除範囲を目指した手術が可能となります。

 

消化管再建が必要な手術では、認定を受けた施設に限られてはいますが保険診療が可能なロボット支援手術が行われる場合があります。da Vinci Surgical System(Intuitive Surgical, Inc.、通称ダビンチとして知られています)が有名ですが、2022年11月以降、国産手術支援ロボット「hinotori™」手術が行われるなど、ロボット手術をめぐる環境が変わりつつあります。

 

手術に先立って、イマチニブによる術前補助療法が行われる場合もあります。

 

◎GISTの治療中に再発・転移が出現した場合

初回治療として外科切除ではなく、薬物治療(イマチニブなど)が行われます。

薬剤の治療効果が低下した(いわゆる部分耐性)となった場合に、耐性病変の完全切除を目指した外科切除が行われる場合がありますが、その有用性は明らかではありません。

 

◎ご自身が、手術を行うか否か、手術を行う場合の術式選択、治療方針の決定に関しては、担当の先生とよく相談して、決められるのがよいでしょう。

 

◎病気に対する診断内容や治療方針などについて、通院されている施設以外の専門医の意見をお聞きされたい場合、「セカンドオピニオン外来」が多くの施設で開設されています。最近では、オンライン形式が可能な施設も増えているようです。

ご自身の今後の治療などの意思決定に際し、参考になるかと思われます。病気でお悩みの場合は、他院でのセカンドオピニオン外来をご利用されるのもよいでしょう。

 

中部GIST患者と家族の会 理事

藤田医科大学 先端ロボット・内視鏡手術学

藤田医科大学病院 総合消化器外科

稲葉一樹